シリーズ「医療の闇」 医師コラム

過労死してしまうくらいなら、頑張らない医者になれば良い

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どんな人に挨拶しても、初めて僕の職業を言うと必ず言われる事がある。

お医者さんですか、大変ですね

そう、世間一般に医者という職業は「大変」だと思われている。

大変というのは非常に大きな概念だが、概ね

  1. 仕事そのもののハードさ
  2. 精神的なストレス
  3. 労働時間の長さ

といった事に対して、つまり物理的、精神的にストレスが高く、労働時間が長い事に対して「大変ですね」と彼らは言っている。

まさにその通り。

しかし実際にどれくらい大変なのか、医師はなぜ過労死してしまうまで働いてしまうのかは理解されていないだろう。

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過労死した医者の話

医者と過労死の話は、たまに耳に入ってくる話題である。

 

過労で心筋障害を引き起こした医者の話

大学時代、こんな話を聞いた。

僕の何個か上の先輩が、初期研修中に急に胸痛を訴えて倒れてしまい、入院したそうだ。

別に太っても無いし、若年で急性心筋梗塞を引き起こすような事は滅多に無い。

診断はたこつぼ型心筋症。ストレスが原因だという。

症状は胸痛で、診断はエコー上で心筋がたこつぼ型になっている状態から診断するらしい。国家試験の知識だから曖昧だが、許していただきたい。

その話を聞いて、僕は心の中でよほど大変な病院に行ったのか、それともその先輩の根性が座っていないのか、程度にしか思っていなかった。

しかし聞くところによると、朝5時に出勤23時に退勤、常に夜中に呼ばれる可能性があり当直明けも休まずに働いていたという。

これは非常に劣悪な環境で、おそらく残業時間だけで月200時間くらいはあるのではないかと思う。

 

自殺した研修医

研修医になってから、知り合いの研修医が自殺した事が耳に入って来た。

同じ年代の、同じような人生を歩んでいる若者が自ら死を選ぶくらいの決断をした事に、驚きを隠せなかった。

 

当直室で冷たくなっていた

後期研修医になってから、色々な人の色々な話を聞いた。

中でも印象的だったのは、当直室で寝ていたはずの医師が、朝起こしに行ったら冷たくなっていた話だ。

20代の若い後期研修医だったそうだ。

若くて元気さが売りの先生で、色々な期待に応えようと頑張り過ぎてしまうフシがあったらしい。

 

決してありえなくはない、医師の過労死問題

これらの話は、いずれも嘘ではない。

しかしどれも、僕の知っている範囲で大きなニュースにはなっていない。一部の医療関係者の中では有名な話、程度に収まっている。

これはどうなのだろう?

この現状をみんな知っているのだろうか。

亡くなってしまった彼らの声は、もう届かない。事実を知っている僕らだけでも、こうしてネットの海に情報をテキストデータとして残しておく事は、きっと意味のある事だと信じている。

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少しずつ改善してきた初期研修医の労働環境

しかし1つ良い事がある。

周りの話を聞いてみると、どうやら初期研修を取り巻く労働環境が改善してきているようだ

当直明けは休みで帰宅できたり、ましてやオペに朝から入れるなんて事はしないような圧力がかかっているらしい。

実際にそうしている病院も増えて来ているそうだ。

そういう労働環境が改善した状況を

俺たちの頃は違った

と言って「シゴく」のはもう老害だ。時代錯誤甚だしい。

少なくとも今の時代の世論には受け入れられない考え方なので、お口をチャックしておく事を推奨する。

 

仕事以外の事が考えられなくなる

僕も月150時間くらいの残業は経験した事がある。なお当直中の時間は含めない。

大体朝6時出勤で日が変わる時間前後に帰宅、という生活が毎日という感じ。

流石にツラかった記憶があるが、僕は適度に仕事をサボる事ができる、手を抜くことができる人間だったため、労働時間が長くてもそれほど負荷が少なかったと思う。

そうでなければ潰れていた気がする。

当時は

自殺なんてするくらいなら辞めちまえば良い

なんて思っていたのだけれど、実際にその世界に足を踏み入れると、なかなかそうはいかない事に気がつく。

まず仕事の事以外考えられないため、人生が仕事になる。

人生=仕事。それ以外の要素は一切排除される。

人生を占めている要素が仕事だけなのに、その仕事が辛い、やりたくないとなると、それは人生そのものが辛い、やりたくない、終わらせたい、と思ってしまうのだ。

  • 人生=仕事、仕事=つらい、→人生=つらい

そして最後には

楽になるには終わらせるしか無い

そう思ってしまうのである。

実際に自殺まで行かなくても、この

仕事以外の事が一切考えられず、かつその仕事が嫌で辛くてやめたくて休みたい。

でも仕事は人生そのものだから、仕事を辞める事は人生をやめる事と同義、だからギリギリまで仕事を頑張ろう

みたいなメンタリティになっている医者は、おそらく結構いる。

その一部が仕事を辞めたり検診専門になったり、ごく一部が実際に病んだり自殺したり、という結果に結びついているだけに過ぎない。

ヒヤリハットとアクシデントの関係性を表すハインリッヒの法則のように、1の自殺には10の予備軍がいて100の可能性がある人がいる、というような危険な背景があるように僕は思う。

 

本当に辛ければ辞めろ

これを見ていて

今医者をやっているけど辛くて辞めたい

という人がいたら本当に辞めれば良いと思う

別になんとかなる。本当になんとかなる。

死ぬ事はない。

家族が困るとか、家がどうとか、どうでもいい。あなたが死んだら家族も家ももっと困るよ。

死ぬくらいなら明日病院に行くな。サボれ。

色々な人が困るだろうけどそんなもん知るか、あなたが死ぬくらい追い込まれたならそれはあなたが悪いわけじゃない。

そして落ち着いてから、変なプライドを捨てて一握りの勇気を持って、転職エージェントに相談してみれば良いと思う。

今の時代、本当に様々な医師の転職業者がある。

自分がどういう環境で働きたいのか。耐えられる労働負荷はどれくらいなのか。自分が一番良くわかっているはず。それをエージェントに伝えて、自分の代わりに職場を探してもらおう

過労死してしまうくらいなら、頑張らない医者になれば良い。

医師の転職方法と具体的な手順

独太がよく使うサイト

医師転職のエムスリーキャリア

医師転職のエムスリーキャリア は、あのm3が運営する医師向けのキャリアサービス。圧倒的な規模感が特徴。

常勤はもちろん、定期非常勤も非常に豊富。大手m3を運営する会社の元には、自ずと情報が集まってくるよう。

医師の転職という狭い業界において、やはり大手の情報力は必要だ。エージェントサービスなので、希望に合った転職先を開拓してくれる。

マイナビDOCTOR

マイナビDOCTORは、全国規模47都道府県を網羅する、大規模なサービスだ。

親が大手人材のマイナビだけあって、流石の全国網羅具合。

医師転職というカテゴリにおいて、ここまでは外す事ができないだろう。

フリーになるなら、まずは「太い常勤+定期非常勤」から始める事を、オススメする。マイナビDOCTORで常勤転職+定期非常勤という形で探すのは、効率が良い。

民間医局

本物の医局を抜けたので、民間医局にお世話になっている。

医師賠償責任保険は、絶対に入るべきだ。

自分を医療訴訟から守ってくれるのは、保険しかない。

またバイト案件もそれなりに送ってくれるので、上記2つと組み合わせてたまに使っている。

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