医師のキャリアと言えば、今までは2つの道しか存在しなかった。
1つは医局内での出世をする道。
最終的には教授、その他医局内で力のあるポストに就く事をゴールとする。どちらかと言えば経済的なメリットを犠牲にし、権力にウェイトが置かれたキャリアである。
もう1つは開業し自分の病院を持つ道。
開業医として成功すれば、年収で億に達する事も可能であり、経済的なメリットはかなり大きい。
そして何より、自分の城を築く事ができる。自分よりも上が存在しない組織を作り上げる事ができるというメリットがある。
これは権利意識が強く、かつ経済的なメリットを享受したい医師が選ぶ道だった。
しかし現代ではドラマ「ドクターX」で描かれたように、フリーランス医師が徐々に増えてきている。
どの医局にも属さず、特定の病院で常勤として働くのではなく、求められる医療行為単位で仕事をし、場所を選ばずに医師として活躍するフリーランス医師。
開業、出世に次ぐ第三のキャリアと言っても良い。
このフリーランス医師の道は、多くの医師が目指す開業というキャリアと比べて、明確なメリットが存在する。
1、設備投資が不要
圧倒的なメリットは、設備投資が一切不要な点。つまり初期投資が一切かからない。
開業をするとなると、レントゲンやCTなど「あって当たり前」の高度医療機器が必要になる。流石に一切の機器なしで開業する、という医師はあまりいない。
レントゲンやCTなどの医療機器は非常に高額である。機械そのものはもちろん、放射線を遮蔽する専用の部屋など特殊な設備投資が必要になる。
数千万から億のコストがかかることは珍しくない。
このような高額機器を仕入れる場合、ほとんどのケースで銀行からの借入を行う。
そして借り入れの利息と元本を病院の収益から返済していく。
しかしながら経営手腕がなかったり、患者からの人気がなく思ったよりも収益が少なかった場合、借入金の返済が滞ってしまうリスクが存在する。
フリーランス医師の場合、設備投資がかからないだけではなく、銀行からの借入金がないためどう頑張っても赤字になる事はできない。
必ずプラスのキャッシュフローが生まれる家計になる点で、フリーランス医師は大きな利益がある。
2、働き方が自由
フリーランスは読んで字のごとく、働き方が非常に自由である。
開業すると容易には休めない
開業をすると、定期的に受診する患者の予約が常にあり、地域のかかりつけ医的な役割を担う事が多いため、自分の都合で休んだり、ましてや長期休暇を取得することは難しい。
しかしフリーランスならば自分の都合で働き方を変える事ができるため、人生をデザインしやすい。
生き方もフリーになるのが、フリーランスの大きなメリットの1つと言える。
フリーランスなら週3〜4労働が可能
実際にフリーランスとして働いている医師は、週3〜4労働という働き方をしている医師が多い。
週休3〜4日という事になり、人生のうち労働しているのは半分だけだ。
フリーランスの場合、働けば働くほど収入が上がるため、国に支払う税金の税率も高まる。働けば働くほど、効率が悪くなってしまう。
労働を自由に操る事で、収入を調節し支払う税金も調節できるのは、フリーランスならではである。
3、1つの地域に依存しないで済む
開業するという事のデメリットの1つは、特定の地域に縛られてしまうという点があげられる。
今その地域に人が住んでいたとしても、10年後20年後にその地域の人口がどれくらいあって、見込み患者数がどれくらいになるかは予測できない。
しかしながら1度開業してしまうと、その地域以外で働くのは難しい。
他の地域でまた1から開業し直すという事もできなくはないが、かなりの労力とコストを伴うだろう。
フリーランス医師の場合、当たり前ながら地域に縛られるという事はない。
人口が減って仕事が減った地域は撤退すれば良いし、人口が増えて仕事が増えた地域の仕事は増やせば良い。
時代の流れとともに変わりゆく人の流れに対して、臨機応変に対応できるメリットがフリーランス医師にはある。
これはフリーランス医師のメリットというよりは、開業医のデメリットが無いという意味合いに近い。
最後に
フリーランス医師は、メリットが大きい職務環境にも関わらず新規参入する医師が少ない。
やはりリスクを過剰に毛嫌いするタイプの人が、医師の中には多いからだろう。
今の時代、医師のバイト紹介会社を利用し仕事を探す事は何ら難しい事ではない。
複数の会社から案件を探してもらえば、仕事に困ることは現状ではほぼ皆無だ。
メリットの大きいフリーランス医師になるために最も必要な要素は、リスクをとって一歩踏み出す勇気かもしれない。
追記:僕がフリーランス医師についてインタビューを受けた記事があるので、良ければどうぞ。