シリーズ「医療の闇」 医師コラム

患者家族へのICのタイミングを医師が合わせる問題について

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誰かが怪我をしたり急病になったりして、予期せぬ形で病院に運ばれ入院したとする。

そうした場合、患者本人はもちろん家族にとってもまさに蒼天の霹靂であって、医師にどういう状態でどういう治療をするのか説明を求めるのはご最もだ。

この説明を業界用語ではIC(アイシー)と呼ぶ。これはinformed concentの略語で、十分に情報を得た上での合意、という意味になる。

もう少し詳しく言うと、患者が

  • どういう環境で運ばれて
  • どういう検査や所見で
  • それがどういう事を意味していて
  • 状態としては今どうで
  • 今後の治療はどうやっていって
  • 回復の見込みとしてはどれくらい

という一連の流れを患者および家族に説明する事である。

このICを行うにあたって、医師、患者家族、可能であれば患者本人が1つの場所に同じ時間で集まる必要がある。

これが今、問題になっている。

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土日しか仕事で病院に来れない家族と、土日休暇の医師

一般に多くのサラリーマンなど労働者の人は土日祝日は休みで、平日に働いている。そうなると、病院に来ることができるのは土日祝日か平日の夜という事になる。

平日といっても、18時と22時では結構大きな差があるけれど…。

医師も当直などの特別業務を除けば、一般的には土日祝日は病院の外来も休みで、予定手術も行わない。つまり一般的には病院は病棟以外休みだ。

しかし、入院している患者さんが常にいる病棟は休むわけにはいかないので、病棟管理という仕事だけはどうしても残る。命や健康が損なわれている人がいる中で、全くの放置というわけにはいかない。

では具体的にどういった形で土日の病棟管理が行われているのか。

これには病院ごとに色々なルールがある

 

土日の病棟管理スタイル

まず1つめは、自分の患者は自分で診るというスタイル。基本的に土日祝も病棟回診を行い様子が変わりないか確認する。

この方法だと、回診する医師が同じであるため病状の変化に気付きやすいし、変化の原因の検討もつきやすい。これは理想的な方法だが、担当医師は毎週末完全フリーというわけにいかず働くため、医師に多大な負担を強いる方法と言える。

もう1つは、当番医師を決めて1つの科でまとめて当番の医師が回診をするスタイル。この場合は土日祝毎回午前中がつぶれる事はなく、丸一日休みという環境を作り出せる事ができる。医師の生活の質は向上する。

こういう状況で、患者家族が「どうしても平日夜には来れない」場合がある。そうなると仕方がないので土日祝の回診後、昼から夕方にかけてICを行う事になる。

 

プライベートが破壊される医師

こうなってくると、医師にプライベートな時間はほとんどなくなってしまう

上記分類の前者のスタイルの場合、一般に休みなはずの土日祝の午前中は必ずつぶれてしまい、たまにICの予定が入って丸一位日つぶれてしまう時もある。午前中回診して、午後ICをして夕方ごろ終わり、少し救急外来に自分の科の患者が来ていないか覗きに行ったりしたら、もうそれで夜になってしまう。

後者のスタイルの病院の場合、せっかく丸一日休みを作り出しても「その日しかICできない」と家族に言われてしまえばそこでICせざるをえない。月に1回あるかないかの丸一日休みで、子供と動物園に行く約束をしていても、それは取りやめにせざるをえなくなってしまう。

このように、患者家族の予定に医師のICを合わせていると、とてもではないが医師のプライベートは破壊されてしまう

医師に離婚するケースが多いのは、単に浮気や不倫が多いだけではなく、こういった抗いようの無い力でプライベートが破壊される事にある。

 

患者家族が合わせるべきなのか

とはいえ患者家族だって忙しく働いているだろう。

夫婦のどちらか一方がパートタイム勤務であったり、主婦であったりすれば別だが、今の時代はどちらもフルタイムで働いていたっておかしくない。

医師と患者家族、お互いにフルタイムで働く身としては、どちらがどちらに予定を合わせるのかは難しい問題だ。

多くの医師にとっては上記のように

  • 土日にICをするという事=ほとんどない休みを絞り出す事

であり、なるべく避けたい。

もちろん、本当に患者家族が平日に朝から夜まで働く場合は努力のしようがない。そこは不可抗力なので考えても無駄だろう。

しかしもし

本当は平日可能だけど面倒だから土日祝にICをお願いしたい

という程度の気持ちであれば、頼むからなるべく医師側に合わせてあげて欲しい

たったこれだけの事で、医師側の生活はグンと楽になり、医師という職業を長く続けて行く事ができるようになるだろう。

 

遠隔ICの時代は来るか

今はスマートフォンが普及し、テレビ通話などを誰もが行える時代となった。

それらの技術を駆使して、直接合わずに行う「遠隔IC」をする事が今後一般的になっていくかもしれない。

そうすれば場所の制限を受けないので、例えば職場で1時間だけテレビ通話する、という対応も受ける事ができる。

クラウド電子カルテを利用すれば、検査値やCT画像などの医療情報も家族にのみ共有できる。それらを閲覧しながら遠隔ICを受けるのは、1つの場所に集まって行うICとほとんど遜色ないサービスになるだろう。

いずれはそうなって、場所や時間を選ばないICができる時代が来るだろう

そうなれば、医師も患者家族も救われる。

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