医局

医者の世界独自の組織「医局」とは?

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医局。たまに医師が口にする言葉であり、ドラマ「白い巨塔」でも出てくる言葉。

かの有名な「白い巨塔」は、医局というクローズドな組織についてメスを入れた作品。あれを見ればどんな雰囲気のものなのか、という事について理解できるはずなので、時間のある人は鑑賞してみて欲しい。

一体医局とはそもそも何なのだろうか。医局の役割と機能は何なのか?

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医局の定義と構造について

医局の定義

医局の明確な定義は存在しない。2018年現在、ウィキペディアには下記のように記載されている。

医局(いきょく)とは、主に大学医学部・歯学部・病院等においての各「研究室」、「診療科」、「教室」ごとのグループ組織のこと。医学部の教授を中心とした講座、大学付属病院の診療科を中核とする医師の集団を指すことが多く、周辺として関連病院等の医師も含めた一大グループ組織であることが多い。

ちょっとイメージが湧きにくいのでもっと簡単に言うと、医師同士の仲良しチームみたいなものである。

本当はもっと殺伐としているし、権利や出世など汚い部分も絡んでくるためドロドロしているが、一言で言うとそうなる。

 

医局という組織の構造について

詳細に説明する。

大学の医学部医学科には、附属病院として運営される「大学病院」という病院が存在する。消化器内科、心臓外科、皮膚科など、各科に大学の「教授」が存在し、その教授が大学病院の「その科の一番偉い人」である。その一番偉い教授を頂点とした、専門科目ごと存在する1つのチームが「医局」である。

つまり、医局とは大学ごと存在する専門科目別に別れた医師の集合体の事である。

なので大体医局の名称は「〇〇大学の△△科」とされ、一番偉い人は「〇〇大学△△科教授」である。

医局組織のヒエラルキーは明確で、教授を筆頭に准教授、と続き、特に役職のないヒラ医局員を「医員」とよぶ。

 

医局の機能

医局の機能は大きく分けて2つ存在している。

 

1、医師をトータルプロデュースする

大学の医学部医学科に属する生徒に講義をする人たちは、もちろんほとんどが医師である。

生理学や生化学など、基礎系の場合はそうではない場合も存在するが、一般には医師である事がほとんどだ。

彼らは大学病院で医師として働きながら、合間を縫って医学部生に授業を行う。同時に大学として研究も行なっており、臨床、教育、研究の3本柱を行うのがチームとしての「医局」である。

医局はこの3本柱を通じて、まずは医学部生を教育し、医師国家試験を合格させ、無事免許を取った医師を一人前の医師になるべく修行を積ませる。そして先輩が後輩に知識と技術を授け、一人前の医師を排出する。

こういった一連の医師のトータルプロデュースを行う組織でもある。

例えば、ある医学部生が医師国家試験を合格し医師になったとする。

1つの病院で30年務めるよりも、様々な病院で様々な経験を積み、様々な上司に知識と経験をすりこまれた方が医師としては成長できるだろう。1つの病院にいては体験できないような手術、出会えないような症例、治療に別の病院では出会えるかもしれない。

その際、医局の絶対的な権力者である「教授」が、医員の人事権を操る。そうして医員は様々な病院に数年ごとに転勤し、様々な知識と経験を得る事で立派な医師になっていく。

 

2、医師の需給バランスをコントロールする

例えばA県に存在するA大学医学部医学科と、そこのA大学附属病院消化器内科の医局について考えてみる。A県で働く消化器内科の医師は、ほぼ全員がこの医局に所属しているとする。

A県にはB、C、D病院が存在したとする。

  • A大学の医局→B、C、D病院へ医師を派遣

B病院の部長が急死して、代わりの医師が必要になった時、A大学の医局は代わりとなるような実力の医師を赴任させるだろう。

C病院の地域に人が減って来て、駅前のD病院に患者が多く受診するようになった時、A大学の医局はC病院の医員を撤退させ、D病院へと送り込むだろう。

このように、特定の地域で医師の需給バランスの変化があった時、それに対応して医師を派遣するのが医局の機能である。

こうして需給バランスを崩さないよう、教授がうまく人員配置をして、その地域の医療基盤を支える役割があるとも言える。

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医局に入るメリット

ここまで見て、医局という組織が何で、どういう役割を果たしているのか理解できたと思う。次に、医員の立場になって医局に入るメリットデメリットについて考えてみる。

医局に入るメリットは大きく分けて

  1. 色々な知識や経験を得る事ができる
  2. 専門性を高める事ができる
  3. 研究をする事ができる
  4. 将来アゴで使える下っ端が勝手に入ってくる

の4つに分ける事ができる。

 

1、色々な知識や経験を得る事ができる

まず医局は教育を行う機関であるから、様々な先輩医師に教育を受ける事ができる、というメリットが上げられる。

例えば整形外科。

一口に整形外科と言っても、肩が得意な先生、膝が得意な先生、脊椎が得意な先生、股関節が得意な先生などその中でもさらなる専門性が存在する。

こういった細かい専門があるにも関わらず、その道のプロが必ずいてその人に教えを請う事ができる、というのは新米医師にとって嬉しい環境である。

また、色々な病院で数年単位で勤務することによって、遭遇する疾患や手術治療の種類などに多様性が生まれる。1つの凝り固まった考えや知識では、正しい医療ができない。

とにかく色々なところから、色々なことを吸収できる環境がある。

 

2、専門性を高める事ができる

ある程度一人前の医師になって、一通りの事ができるようになったとする。そして、自分の専門性を高めたい時期が来たとする。

その時大学病院では市中病院ではいないような、専門性に特化した人材がいる。彼らから教育指導を受け、自分の専門性をより高める環境が大学病院には存在する。

 

3、研究をする事ができる

大学病院は市中病院と異なり、研究機関でもある。実験をしたければ実験をする事ができる。

京都大学の山中教授も、研究が好きで大学病院で研究をしていた。臨床医よりも研究をしてみたい、アカデミックな道に進みたい、という医師が夢を叶える事ができる場所でもある。

 

4、将来アゴで使える下っ端が勝手に入ってくる

医局には上記のようなメリットがあり、そのメリットを享受するべく若手の医師がたくさん入った。

逆に医局である程度上の立場になれば、自分より下の立場の人たちをアゴで使えるわけであり、そういう下っ端の数がたくさんいる組織で出世する事は意味があった。

しかし今となっては…。

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医局に入るデメリット

長所の裏返しは短所であるように、メリットの裏返しはデメリットである。

デメリットは大きく分けて

  1. 色々な病院を転々とさせられる
  2. 給料の少ない大学病院へ勤務させられる
  3. 雑務が増える

の3つ。

 

1、色々な病院を転々とさせられる

様々な経験を積むため、色々な病院に転勤をさせられるが、それはメリットでもありデメリットでもある。

聞いた話だと、来年から「福井に勤務ね」と言われ、その2年後に「今度は九州」と言われ、最後は東北地方に転勤させられたという先生もいるらしい。

家族には負担がかかるのは間違いない。

 

2、給料の少ない大学病院へ勤務させられる

とにかく大学病院というのは、給料が少ない。医局に入りたい人がたくさんいて、給料を低く設定してもそういう人達が大学病院には集まるから、低いままなのである。

こちらの記事も参考に。

医師はなぜバイトをするのか?給料の不都合な真実

 

3、雑務が増える

医学部生への教育、上司の研究の補助、教授が開発した新しい治療法の臨床試験など、本来市中病院で働いている時には関わらなかったはずの業務が降りかかってくる。

これが「様々な経験を積めて良い」と捉える事もできるが、人によってはやりたくない仕事もその中には含まれていると思う。上司に理不尽な仕事を振られたりする事もある。

そうなると「雑務が多いな」と感じてしまうだろう。

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医局の力の源泉=豊富な人材

ここまで見てわかったと思うが、医局の機能の根幹は「潤沢な医員の数」と「人事権の強さ」である。

派遣できる医員の数が少なければ、上記の機能を果たす事はできない。需給バランスの崩れに対応して代わりの医師を派遣する事もできないし、上級医の数が少なければ医学生や新米医師達に十分な教育を施す事ができない。

人事権が強くなければ、つまり医員が「教授」の命令に従わなければ、医師を需給バランスに合わせて派遣し地域の医療基盤をコントロールする事ができない。

医員が減ったり言うことを聞かなくなったりすると、支配下における病院の数が減り、医局としての力を失う。

力を失った医局は若手の医師からすると魅力が薄れ、さらに医員が減っていく。

逆に言えば、医員が豊富で従順であればあるほど、より多くの病院を支配下にする事ができ、さらなる力と魅力を生み出し、若手の医師がさらに増える

 

医局=悪、とは言い切れない

医局というのは、莫大な権力を持つ教授が好き勝手やる悪い組織、という印象があるかもしれない。

しかし、こういった微妙なバランスの上に成り立っている、きちんとした役割がある組織なのである。必ずしも一方的に悪である、と言い切ることはできないかもしれない。

医者からすると医局とは、知識や経験をもらう代わりに、自由を差し出す組織なのである。自由を愛する人は向いていないだろう。

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