とにかく、コロナが大変だ。
少し前まで余裕があったものの、一気に感染者が増えた。
また冬になり心臓や脳のイベント(心筋梗塞、脳梗塞、大動脈瘤破裂、脳動脈瘤破裂)が増えるため緊急症例も増えてきており、ダブルパンチといった具合だ。
冬は、ただでさえ病院が忙しい。
加えて感染症の脅威にも晒されていて、助けなければいけない患者が、多過ぎる。
医療従事者の物理的、心理的な負担はグッと高まっていると言えよう。
コロナが医療従事者のメンタルを潰す
仕事が忙しい。
これは、どんな仕事をしている人にも、起こり得る事態だ。
単純に忙しいというだけで、それなりにダメージはあるものだが、それだけではほとんどの医療従事者は持ちこたえてくれるだろう。
心理的な負担。
コロナという、目に見えない、そして完全に防御するのは難しい感染症と戦うのは、かなり高い心理的な負荷が存在する。
自分が感染するリスク。
家族を二次感染させてしまうリスク。
あらゆるマイナスの可能性を考えると、医療従事者の心理的な負担はかなり大きいはずだ。
しかしながら、医療従事者のメンタルを潰すのは、これらだけではない。
コロナが医療従事者のメンタルを潰す、意外な理由
コロナが医療従事者のメンタルを潰す、意外な理由は「戦う動機が不明になってしまう」からだ。
医療従事者というものは、普段から多少なりとも、自分の自己犠牲に疑問を抱いている者も多いだろう。
なぜ、こんな高齢者のために自分は頑張らなければいけないのだろう
なぜ、こんなに働いて稼いだお金も、税金で取られて高齢者の医療費に使われてしまうのに、働くのだろう
いびつな人口ピラミッドと、手厚い社会保障。
高齢化社会と国民皆保険制度の組みまわせは、医療従事者の「自己犠牲」によって成り立っている部分が、多いように思う。
ここに、コロナだ。
コロナに感染している患者さんを、助けるべく自己犠牲の精神で医療に挑む。医療従事者としては真っ当で、当たり前だ。
しかしながら、よくよく考えてみると、コロナに感染しているのは、自粛をしていないから感染するのではないだろうか。
目の前の「コロナに感染しているこの患者」は、何をしていてコロナに感染したんだ?
我々医療従事者が外出を控え、飲み会を我慢し、時には家族との接触さえ制限するような環境で、ひたすら病院で戦っている中、もしかして外出して飲み会でもしたんじゃないか?
だったら自業自得じゃないか、一体なぜ彼らを助けなければならないのだろうか。
こう思ってしまっても、致し方ない。
ただでさえ、自己犠牲に対する疑問をタネとして心に抱えている医療従事者は、ここで気持ちが爆発する。
コロナは、間接的に医療従事者のメンタルを潰す。
物理的、心理的な負担だけでなく、医療従事者の
自分は何と戦っているのだろう
と、戦う動機さえ、奪ってくる。
コロナは医療従事者のメンタルの戦い
かくいう僕も、どちらかというと日本の医療に一切の希望を見出していないタイプであるが、当然ながらコロナによってより意欲は削がれつつある。
それでも、患者は来る。
医療従事者の知識、スキル、連携、反射神経、何もかもが今求められている。
コロナとの戦いは、コロナファイターと言われる医療従事者達が、いかにメンタルを潰さずにいられるか、という戦いでもあると思う。
もちろん、全国民の「感染拡大をさせない努力」は必要だ。
手洗いうがいは、徹底すべき。
そういう意味では地球全人類の総力戦だと言える。
しかし、結局のところ病院というセーフティネットを保てるかどうか、これは医療従事者のメンタルに依存する部分は、かなり大きい。
医療従事者の数は、一気には増やせないからだ。
ハード面での供給には、質にも量にも限界がある。
あとはもう、医療従事者のメンタルの戦いになる。
我々医療従事者の負担を減らすためにも、国民の皆様にはぜひ、可能限りの感染防止策を、お願いしたい。
病院で働いていると、ただでさえ「なぜ高齢者にこんな奉仕しなければならないんだ」という、一種の「自己犠牲に対する嫌悪」があるだろうが
コロナとGotoで「なぜ税金で旅行して感染拡大させてる奴らに奉仕しなければならないんだ」と、さらに嫌悪感を増幅させ、嫌になったスタッフもいるだろう。
— Dr.独太 (@drkodoc) December 7, 2020