昔から日本では
病院が多過ぎる
と言われてきた。
実際、人口当たりの病院数は諸外国と比較して飛び抜けて多く、人口当たりの医師数は平均くらいなのに、1施設あたりの医師数は少なくなっている。
1施設あたりの医師数が少ないと、何がまずいか。
端的に言えば、医師への負担がかかる。
医師1人当たりの仕事量が、圧倒的に増える。
具体的に言えば
- 当直回数が多い
- 当直明けに帰宅できない
などである。
手当を出せば良い、という問題ではない。
もうそういう病院で働いている医師からすれば、お金なんて要らないのだ。
とにかく、疲れているのだ。
休みたい、ゆっくりする時間が欲しい。
心の声は、ただそれだになってしまう。
昔から言われていた事だが、数十年の時間が経ってやっと、国も病院の統合再編をし始めるようだ。
病院統合再編のメリット
病院統合再編によるメリットは明確だ。
1病院当たりの医師数がグッと増えるから
- 当直回数が減る
- 当直明けは帰宅できる
というメリットがあるだろう。
もちろん、病院統合再編が進行して1つの病院が巨大化すれば、患者の数は変わらないため、そこに患者が集まるようになる。
つまり
- 当直帯の患者数は増える
- 当直自体は忙しくなる
事が予想される。
当直帯は眠る事が難しく、かつ当番の日は呼ばれる可能性が高くなるかもしれない。
1回の当直は大変かもしれないが、当直回数そのものは減るし、当直明けは朝から帰宅できるとなれば、話は違うのではないだろうか。
この状況を作り出す事は、多くの医師にとってメリットが大きいと言えよう。
病院統合再編のデメリット
病院統合再編のデメリットは、少し複雑である。
まず患者サイド。
患者からすれば、病院統合再編が進行すれば、近くにある病院が消えて無くなるかもしれない。
街の中心にあるような、大きな病院に集約化されてしまうからだ。
- 病院へのアクセスが悪くなる
という、患者側から見たデメリットがある。
次に、事務部門。
病院規模に比例して、医療スタッフはそれなりに必要にはなるが、事務や管理部門は比例して必要にはならない。
病院統合再編が進行すれば、医師や看護師などのスタッフの雇用は保たれる可能性が高いが、事務や管理部門の雇用は保たれない可能性が、かなりある。
というか、まず不要な人材がたくさん溢れでると思う。
- クビを切られた事務、管理部門の人材が溢れる
というデメリットは、あるかもしれない。
これはメリットと表裏一体で、病院自体の経営状況は改善するため、間接的に病院に支払わなければならない医療費単価そのものは下げる事ができるため、国の負担という意味では少なくなる。
国の財政面からすれば、不要な事務や管理部門の解雇は、間接的にメリットになり得る。
病院統合再編で、困るのは誰だ?
病院統合再編のメリットとデメリットについて、理解が深まったと思う。
ここで考えておきたいのが
病院統合再編で、困るのは誰だ?
という事である。
つまり、病院統合再編によるデメリットを引き受けなければいけない人間は誰だ、という事と同じだ。
そんなもの、明確である。
上記の通り
- 田舎に住む患者
- 大量雇用されている事務、管理部門
である。
逆に言えば、今まで病院統合再編によってメリットを享受する側が、デメリットを受けなければならない人間を、支えていたわけだ。
医師や看護師が犠牲になり、田舎の患者に「病院への良好なアクセス」を提供していた。
国民と国が無駄に税金を使い、明らかに不要な規模の「事務、管理部門の雇用」を提供したいた。
我々医師からすれば、ボロボロになるまで働いて、田舎の患者に「病院への良好なアクセス」を提供し、働いて働いて稼いだお金から高い税金を取られ、病院の事務、管理部門の人間の給料へと流されていた、とも言えるわけだ。
後者については、かなり間接的な動きであるため、やや論理が乱暴な部分があるが、全くもって間違っているとは言い切れないだろう。
そう思うと、医師からすれば病院統合再編はメリットしかないのだ。
病院統合再編は、ぜひ進めて欲しいし、やり遂げて欲しい。
しがない医師の1人である僕からすると、切に願う。