昨今では、働く人のワークライフバランス(work-life balance)が重要視され始めている。
ワークライフバランスとは、読んで字の通り、仕事と人生のバランスの事。会社や組織の中で働く自分と、1人の人間としての自分、これらのバランスを考える時代になった。
どちらにどれくらいのウェイトを置くか、それは人それぞれ。自分にとってベストなウェイトを考えるのが主流になりつつある。
医師の世界でももれなくこの潮流が押し寄せてきていて、激務で特殊な医師という職に就く人すら、ワークライフバランスを考える時代となった。
医師がワークライフバランスを考える、という事の意味
医師という職業は、普通のサラリーマンとは異なる事が多過ぎるため、普通のサラリーマンがワークライフバランスを考える話とは、一度切り離して考える必要がある。
まず医師という仕事の特殊性を考える。
医師という職業は、その仕事上
- 責任が重い
- 労働時間が長い
- 何をもって「勤務している」状態なのか曖昧
- 当直がある(病院に泊まる)
- 給料が高い
という点で、サラリーマンとは大きく異なる。
これらの特殊性について、どうバランスさせるかという事が医師のワークライフバランスを考えるヒントになる。
医師がワークライフバランスを考える事の基本
基本的には、医師が仕事のウェイトを落とすには、上記の項目を動かせば良い。
つまり
- 「責任の重さ」を軽くする
- 労働時間を短くする
- 雑務を引き受けない、仕事が終わったらスパッと帰る
- 当直を減らす
とすれば、ワークライフバランスはライフに傾き、ワーク部分のウェイトは減る。
責任の重さを軽くする、とはつまり「責任の重い仕事をやらない」事と同義である。
ここで給料、お金について触れなかったのは、医師の場合上記のように「ライフ」へのシフトを行うと、給料が下がる。
そもそもの労働時間が減るという事もあるが、仕事の単価が下がるというのも原因としての1つを担っている。
つまり
- 多くの医師がやりたがらない
- 多くの医師ができない、難易度が高い
ような仕事は、単価が高い。
逆に健診や献血のように、医師免許をもった人間であればできる仕事の場合は、単価が低い。
この「労働時間あたりの単価」は非常に重要な考え方だ。
医師がワークライフバランスを考える事の応用
医師がワークライフバランスを考える上で、重要なのは責任、労働時間、当直、業務内容などは重要な要素だと述べた。
次に考えるのは、お金と税金について。
医師の給料は高く、伴って税率も高い。医師がワークライフバランスを考える上で避けられないのが、税率の上昇に伴う手残り収入の減少。
大変で難易度の高い仕事を、フルタイムで行なっている医師は給料が高い。バイト代も高い。しかしながら伴って税率も高く、手元に残る収入は思ったより少ない。
例えば週4で低難易度の仕事をして、年収1500万の医師Aがいたとする。手元の収入は1000万くらいだろう。
高難度のストレスの高い仕事を週6でして、年収3000万の医師Bがいたとする。手元の収入は1800万くらいだ。
どちらが幸せだろうか?
医師Aは、年間192日働いて、手元に1000万もらっている。1日5万ちょい。仕事内容はストレスが少ない。
医師Bは、年間288日働いて、手元に1800万もらっている。1日6万ちょい。仕事内容はストレスフルだ。
僕が思うに、圧倒的に医師AのQOLが高い。
医師は給料が高いぶん、働けば働くほど税率が上がり、手元に残るお金の割合が減る。すると思っている以上に、時間単価は下がる。
このように、ワークライフバランスを考える上で
- どれくらいのストレスの仕事を
- どれくらいやって
- どのくらいの年収になって
という事を考え、追加で
- どのくらいの税金が取られて
- どのくらい手元にお金が残って
- どのくらいの時間単価になるか
を考える事が、医師のワークライフバランスを考える上で、重要になる。
税金と時間単価、という変数を見逃してはならない。