医師として働いていて「転職したい」と思うタイミングは、いくつかある。
大きく分けて
- ライフスタイルを変えなければいけない
- 健康を害してしまった
- 人間関係のトラブル
- 雇用条件や職場環境の悪化
の4つだ。
ライフスタイルを変えなければいけない系
医師も1人の人間。医師として働きながらも、様々なライフスタイルの変化がある。
その変化に合わせて職場を変える事が、その人の人生により良い影響をもたらす場合がある。
ライフスタイルの変化に合わせて転職する医師は、結構いる。
1、子供が生まれたから妻の実家に行きたい
若手で最も多いのがこのパターン。
女性も働く時代、やはり子育てをする上で必須になるのは親のサポート。
女性のキャリアも考えると、親のサポートを受ける事ができないのは、子育てをする上で大きなデメリットだ。
最近はベビーシッターや家事代行サービスも普及してきてはいるものの、一部の都市部で止まっている。
父親の実家、母親の実家、どちらかに近い方が地方では依然として有利だと言える。
またどちらかといえば、母親側の実家に行った方が、母親も気兼ねなく子育てをお願いできるし、色々教わる事もできる。
結果的に、母親の実家の近くの病院に転職する医師が多い。
2、子供が生まれたから仕事量を減らしたい
子供が生まれると
子育てにリソースを注ぎたいから仕事量を減らしたい
という思いで転職する医師もいる。
実際のところ、この場合は手段としていきなり転職を選ぶのは間違っている。
本来ならば上司や病院上層部に、週4勤務に変更してもらうとか当直を外してもらうとか、その辺りの労働条件の交渉をするのが第1選択になろう。
しかしそういう交渉は、頭の固い老人達では中々受け入れられない。交渉に失敗したならば転職すれば良いだろう。
また、まだまだ普及していないが、育休を取得する若手もごく稀に存在している。
この辺りの常識がひっくり返って、子供が生まれたら週4勤務で育休あり、とかになれば医師も病院に定着するのかもしれない。
3、親の介護が必要になったから実家に行きたい
一気に年齢があがるが、40〜50台の医師に多いのはこのパターン。
実家が離れたところにあり、兄弟も実家の近くにいない場合、親の自立生活が難しくなるとどうしても帰らざるを得ない。
仮に施設に入れるとしても、何かあった際にあまりに遠方にいると、対応できない。
そういったデメリットを承知で遠方の病院にい続ける先生もいるが、この場合は実家近くの病院に転職するケースが大半だろう。
また田舎の方が労働条件や給料が良かったりするので、自分の年齢に合わせて仕事内容を変えるという意味合いも兼ねている。
健康を害してしまった系
人間生きているとどうしても健康を害する可能性は常にある。また医師という過酷な仕事を続けていると、それが理由で健康を害してしまう時もあるだろう。
- 健康を害してしまい今の仕事ができない
- 今の仕事が原因で健康を害してしまった
これらの場合、転職は1つの候補に上がる。
4、体、メンタルがやられてしまったので仕事量を減らしたい
何らかの理由で肉体、精神の健康を害してしまい、今の働き方で働くのが不可能になってしまった場合。
一定期間休む事で治るのならば良いのだが、精神的なものだといつまでに治るとか見通しも立たないし、どうしても今の仕事を続けるのが難しくなる。
そうした時、例えば1度仕事をやめて、ゆるい勤務条件の病院で再スタート、という形も1つの転職活動だ。
またこういう場合に同時に大変なのが、自分が抜けた人材の穴埋めをどうするかという問題。医局のサポートがあれば良いが、無いとなると病院上層部には早めに連絡しておいた方が良いだろう。
5、医師として働く気力を失ったので働きたくない
いわゆる「燃え尽き症候群」というやつ。昔熱心だった先生に多いように思う。
この場合、同じ仕事内容を別の病院でやってもダメなので、基本的には転職すれば良い、というわけにはならない。
むしろ同じ病院でも、仕事内容さえ変えてしまえば転職しなくても問題が解決する。
とはいえ、このメンタリティにまでなってしまったら、1年ぐらい仕事を休むのもアリだと思う。無理に転職するというよりは、休職したらどうだろう。
人間関係のトラブル系
多くの人間が存在する病院では、人間関係のトラブルが絶えない。
特に医師という特殊な人間が集まっていると、おそらく普通の人が集まった集団よりもトラブルが多いように思う。
人間関係でトラブルが発生すると、その職場で働き続ける事に多大なストレスを感じる。
仕事内容や雇用形態に不満が無い場合、人間関係だけゴソッと変える事ができる転職は有用な手段となる。
6、誰かとケンカしてしまったので別病院に行きたい
同じ科ならまだしも、他科の先生とケンカをしてしまい、いわゆる「混ぜるな危険」扱いになってしまった場合。
僕の同期がこのパターンで、非常に働きづらくなったと言っていた。
このパターンの場合、別に働く事そのものには問題が無いので、転職は唯一の特効薬となろう。
7、ハラスメントの被害者、加害者になってしまったので別病院に行きたい
最近声高に叫ばれる、パワハラ、セクハラなどのハラスメント問題。
もちろん、今まで看過されてきてしまっていた事が問題なのだが、社会の急な変化に対応できない中堅以上の医師も少なく無い。
冗談だと思うのだが、年配の外科の先生が研修医に
先生さあ、セクハラ大丈夫?
とオペ中に言っていたのを聞いたことがある。正直笑ったが、今の時代おそらくこれはアウトだ。
8、医局を辞めたので気まずくて医局の支配地域から出たい
医局を辞めると同時に転職、というパターンは良くある。
特に医局の力が特定の地域で強い場合、その地域の病院で働くと昔の同僚(医局員)に出会うことがあって、結構気まずい。
常勤ではいなくても、バイトでたまに顔を合わせたりする事もある。この場合はタイミングが予想できないので心の準備もできておらず、なんだかメンタル的に削られる。
じゃあ転職して医局の支配地域を抜けよう、と思うのは非常に自然な流れ。
とはいえこの場合、医局に頼らず自分で病院を探す事になるわけで、エージェントと今後のキャリアについて一緒によく考えて相談した方が、絶対に良い。
雇用条件や職場環境の悪化系
新薬、新しい医療技術、高齢化、女性医師の増加、医療費削減、独立行政法人化…あらゆる影響を受けて、日本の医療界は日々変化している。
その変化の仕方の1つとして、どうしても雇用条件や職場環境の悪化は起こり得る。
職場によって雇用条件や職場環境はまちまちなので、転職というのは1つの選択肢になるが、基本的にはまず病院上層部へ待遇改善を訴えるのが、最もローコストで手っ取り早いだろう。
それでも改善が望めない場合、転職活動を開始すると良い。
9、待遇が相対的に下がったのでより良い待遇の病院に行きたい
自分の働いている病院の、周辺にある病院の待遇が徐々に良くなっているにも関わらず、自分の病院の待遇が悪い場合、より良い待遇の病院に行きたいと思うのは普通の事。
ましてや近くの病院となれば、地理的な条件もあまり変わらないので、引っ越しや子供の転校も不要。やりやすいはずだ。
ただし、基本的にこの場合、待遇改善を上層部に掛け合うのが良い。
まずはそこから始めよう。
10、医師が減り忙しさが増したのでもっとゆっくり働きたい
同じ科の医師が辞めてしまって、医師1人あたりの仕事量が増えたり、患者が急増して仕事量も増えた、なんて場合ももちろん起こり得る。
この場合、単純に労働負荷が高まっているのだから、その分の見返りとして給料を上げてもらうのは、まあ普通。
それでも納得できない場合、正直なところ転職するのが正解かもしれない。
というのも、例えば医師が辞めて仕事が増えたとして、次に新しい医師がすぐ来てくれるのだろうか?
医局との関連があれば派遣されるかもしれないが、そうでない場合次の医師が来るのが一体いつになるのかわからない。
また患者の増加、症例の増加は防ぎようが無いので、基本的には医師数を増やして医師1人あたりの負荷を減らすしか無い。
これもまた解決方法が「医師の確保」なので、すぐに解決する事はまず無い。
待っている間に自分がやられてしまうので、この場合は転職するのをオススメしたい。
このように、医師が転職する理由は本当に様々であるが、安易に転職する事はオススメできない。
転職しようと思ったには、何か理由がある。
その根本的な原因は、転職によって果たして解決できるのだろうか?
自分が転職する理由を考えた時に、何が現状不満なのかをよく考えるべきだ。
じゃないと転職先でも同じ過ちをする事になるだろう。
そうならないためにも、現状の不満を書き出し「不満カード」を作成する事をオススメしたい。