医師をやっている人にはわかると思うが、疲れた毎日の中にたまにある寝当直バイトは、もはや癒しの1つである。
わからない人のために説明すると、寝当直バイトとは読んで字のごとく「ほぼずっと寝るだけの当直バイト」の事。
多くの場合、老健病院や介護保険施設併設の小さな療養型の病院で、医師室に1人ポツンと過ごす。
医師にとっての寝当直バイト
寝当直バイトの性質として、いくつか特記すべき事がある。それは
- 基本的にはヒマ
- 全国各地に仕事がある
- 科による隔たりが無い
の3つ。
まず寝当直バイトは、基本的にはヒマである。
何か医師の診断や処置が必要な状況に患者さんが陥らなければ、何もやる事がない。
もちろん、常に仕事がある状態であればそれは「当直」ではなく「夜勤」であるから、ある程度のんびりと時間を過ごせるのは至極当然の事。
むしろ三次救急の病院のクソ忙しい、全く眠る事のできない「当直」が異常なのだ。
次に、全国各地に仕事がある。
全国各地に高齢者は住んでいるので、老健病院や小さな療養型の病院は全国どこにでもある。当然そういった病院に医師の当直は何かあった時のために必要で、全国各地に求人がある。
また、科による隔たりが無い。
寝当直をしている医師が行う仕事は、基本的には発熱の対応、転倒の対応、入れ歯誤飲などコモンな不測の事態に対応する事と、DNRの患者を看取り死亡確認をし死亡診断書を作成する事。もし患者が重症の場合、それを見極める眼があり近くの大きい病院に搬送できる、という能力も時には必要になる場合もある。しかし多くの場合DNRである事が多いだろう。
これらの仕事内容は、特定の専門科でないとできない仕事、というわけではない。
医師免許を持っていて、かつ初期臨床研修である程度の事をしていれば、おそらくどんな医師にも対応できよう。
もちろん、例えば入れ歯誤飲をした患者に対して、たまたま耳鼻科医が当直医であればそれはラッキーだ。朝方の胸痛で循環器内科医が当直医であればそれもラッキーだ。
こういった小さな差はあるものの、致命的な差を生むような特殊な仕事内容は基本的には存在しない。
寝当直バイトのメリット
寝当直のバイトのメリットは、大きく分けて以下の2つがある。
- 肉体的疲労が少ない
- 自分だけの時間を多く過ごせる
医師のバイトの中でも、ほとんどの場合で実質的な労働時間がかなり少なく、肉体的には疲労が蓄積しにくいため、体は楽。
普段の仕事で疲れきっている医師にとって、これが1つ大きなメリットにはなる。
とはいえ住み慣れた自分の家で過ごすより多少は過ごしにくいし、電話がかかってくれば対応しなければならないので、自分の家で過ごす休日と比べれば肉体的疲労感は間違いなくある。
あくまで他のバイトと比べると、肉体的疲労感が少ない。
また、自分だけの時間を多く過ごせるのも良いリフレッシュになる。
医師として働くと、なかなか自分だけの時間を作るのは難しい。
そんな中、当直室でのんびりと自分だけの時間を過ごし、気の向くまま本を読んだり論文を読んだり、資料を作ったりhuluで映画を見たりすると、かなりの心理的なリフレッシュになる。詳しくはキツい、ツラい…しんどい当直を快適に過ごすテクニックを参照。
寝当直バイトのデメリット
寝当直バイトもメリットばかりではない。抱き合わせのデメリットももちろん存在する。
それは
- バイト代が安い
- 眠れる見込みで行くと以外と眠れない時もある
の2つ。
バイト代が安いのはある意味致し方ない。ラクで医師免許さえあれば基本的には誰にでもできる仕事なので、需給の関係から必然的にバイト代は下がる。
問題は後者。つまり忙しいかどうかわからない、実質的な労働時間が読めない事。
寝当直バイトだから仕事はない、眠れるだろう、と思って当直明けにバイトを入れると、思いの外忙しくて眠れず、2日まるまる睡眠がままならないなんて可能性も出てくる。
またついつい夜更かししてしまって、12時過ぎに寝ようとして1時に呼ばれるという、お粗末な結果に終わるときも。
既婚の医師が寝当直バイトを好む理由
僕の周りの先生で、既婚の医師ほど寝当直バイトを好む傾向にある。
色々話をしてみると、原因がわかった。
やはり結婚して子供が生まれると中々「自分だけの時間」が取れないらしく、そこに不満があるようだ。
寝当直バイトは基本的に呼ばれずに待機している時間が長いので「自分だけの時間」を確保しやすい。
寝当直バイトはバイト代が低いというデメリットがあるが、自分だけの時間を確保しやすいというメリットがある。既婚の医師にとって、このデメリットよりもメリットの方が大きいのだろう。
寝当直バイトを探すなら
寝当直に関しては、別サイト「寝当直の森」にまとめた。
自分としてはうまくまとめる事ができたと思うので、ぜひご覧頂きたい。